「私もカウンセラーになりたいんです」と言われることは少なくありません。一方で、よく話を聞いてみると「人の話を聴く仕事をしたいんです」「私も色々な悩みがあったから、今度は誰かの悩みを解決できる仕事に就きたいと思いました」というちょっとざっくりした回答が多いのです。

別に、否定するわけではなく、私もそうでした。なんとなく「優しい雰囲気があって、いろいろお話を聞いてくれる職業なんだろうなー」というふんわりとした気持ちで大学院への進学を決めました。というか、どこか「自分のことをもっと知りたい」という要求もあった気がします。学んでいくうちに自分への発見もありましたが、それはそれで結構辛い出来事でした。このお話はまた別の機会に。

というわけで、「実際に心理士がどんなことをやっているのか紹介できたらな」という気持ちで記事を書きたいなと思ったわけでした。

査定・面接・地域援助

公認心理師も臨床心理士も基本となる業務は三つだと思っています。それが「査定(アセスメント)」「面接」「地域援助」です。公認心理師と臨床心理士の定義を見比べてみても、この3つは共通していると言えます。定義上の違いは、公認心理師はこの3つに加えて教育が定義されていること。臨床心理士は研究が定義されていることでしょう。研究、教育は非常に重要なものですが、根幹は先ほどの3つの業務だと思います。

どの分野であっても、査定・面接・地域援助のどれか一つだけをやっているということはなく、この三つを満遍なく行っている職場が多いです。ただ、医療分野などは心理検査だけ取る「テスター」という役割もあります。地域援助を行わず、面接を通してだけクライアントと接するというパターンの働き方も多いです。しかし、その場合も査定をしないということはありません。査定しないで面接するカウンセラーがいたらそれはモグリです。後々解説していきますが、いわゆる心理検査をとることだけが査定ではありません。初学者の方は、心理検査だけを指して「アセスメント」と言っているケースも少なくありません。それはちょっと違うかなと私は考えています。

それでは、この3つの業務についてさらに詳しく見ていきましょう。

査定

日本語だと査定なのですが、「アセスメント」ということが圧倒的に多いです。「アセスできたー?」とか、「どんな感じにアセスしたの?しゃべってみて」みたいなやり取りを求められることは多いです。

「アセスメント」という言葉はもともと経営学の用語だったらしいです。ある会社の持ち物(資産とか負債とか)そういったものを調べて円グラフにまとめるようなイメージが経営学上のアセスメントというみたいです。経営学をやったことがあるわけではないので、間違っていたら指摘してください。臨床におけるアセスメントもそれに近いイメージで、クライアントさんの持っている色々な側面を知って、それがどう社会と影響しあっているのかを考える行為です。その個人の持っている要因を調べるうえで心理検査を取ります。アセスメントという観点からいうならば、「面接の約束があるけれども、そこに現れるかどうか」ということもアセスメントの材料になるわけです。例えば、約束した時間に現れなかったら「病状が悪化したかな?」とか「忘れちゃったかな?」ということを考えるわけです。そこから連絡を取ったりすることで、その人の状態を知ることができますね。

上の図は、アセスメントをわかりやすくするために作ったものです。岩国怜さんは、教育関係者と書いてありますね。もしかしたら教師かもしれません。しかしFIQ(知能指数)が72と出ています。面接場面では非常に落ち着きなく、立ち歩いたりしていました。しかし、かわいいワンちゃんを飼っていて、それが毎日の癒しになって頑張れるといっています。

このようにアセスメントした状態から、「IQ72だとしたら、教員だったら教科指導や生活指導でもいろいろな困難が生まれるだろうな。管理職ともうまくいかないかもしれない。落ち着きもないので、じっとしている作業などもかなり苦手なのではなかろうか。ただ、私生活充実しているから、その要因もあって病理的なところには陥らないのだろう」みたいな見立てを立てていきます。

これをもとに面接を行って、クライアントさんの葛藤にアプローチをしたり、さらに情報を集めて見立てを深めていったりします。

今回はクライアントさんをアセスメントしましたが、学校関係だと学校自体をアセスメントしたり、クラスをアセスメントしたりすることも求められます。心理士の行うすべての介入には「アセスメント」と「見立て」が必ずあります。

面接

今更説明するまでもないくらい、心理士といえば面接のイメージが強いみたいですね。カウンセリングルームにおいて、様々な心理療法を行ったりします。「カウンセリング」という言葉をよく聞きますが、別に来談者中心療法だけを指しているわけではなく、すべての心理療法はカウンセリングを介して行われるいう説明がしっくりきます。

色々な考え方はあると思いますが、心理士の行う面接はカウンセリングルームで、カウンセリングの時間しか成立しないと考えています。そして、心理士とクライアントという言葉以外にその人間関係を説明できない時にしかできません。

例えば友人とか、妻とか、上司とか、友達の彼女とか、それ以外に説明できる言葉があるときに「心理士」の行う「面接」は成立しません。本当に稀ですが、友人などに「恋人のカウンセリングをしてほしい」などと言われることがありますが、その場合、その恋人のカウンセリングを私がすることはできません。他の心理士さんを紹介します。ほかの関係性がある場合、話を聞いたり、相談にのったりはしますが、それは面接とは全く別のものです。

この話は、「面接の枠」といってしょっちゅう話題になる概念です。これを説明するとこれだけで終わってしまいますので、枠の話はまた別の機会にしましょう。

地域援助

これが一番イメージしにくいのではないでしょうか。面接の場合は、相手が個人だったり、家族面接だったとしてもせいぜい5人くらいです。地域援助の場合は、その相手が一定の組織であったり社会であったりします。

地域援助を考えるうえで、一番わかりやすいのが産業分野でしょう。

例えば、毎年休職者を何人か出す部署があったとしましょう。その部署は休職が日常的に出るので、慢性的に人手不足です。残業時間も平気で80時間を超えてしまいます。この場合、リワークプログラムや面接を通して休職者を復帰させたところで、再び休職してしまうことはなんとなく想像がつくのではないでしょうか。この場合、「慢性的な人手不足」という状態を変えていかないと、その部署は休職者製造装置になってしまいます。だからこそ、その部署の管理者や産業医、管理職などと連携を取りながら、その「部署」にアプローチしていくのです。

この介入の際も、アセスメントと見立てが必要です。皆さんはカウンセリングルームで面接をしている心理士のイメージが強いかもしれませんが、この地域援助も心理士の行う主な任務の一つです。スクールカウンセラーというとカウンセリングルームで待機しているイメージが強いですが、最近はかなり地域援助を求められます。ただ、先ほども言った枠の問題もあり、地域援助をやればやるほど、面接はやりにくくなるというジレンマも私は感じていたりします。このあたりのさじ加減はさらに研究が必要なところでしょう。

だからこそ、臨床心理士には「研究」という業務が定義されているのかもしれません。

最後まで読んでいただきありがとうございました。ツイッターでもブログでも感想やご意見を聞かせていただければと思います。