第一回公認心理師試験も終わり、問題も心理研修センターのホームページで公開されました。配点は事例問題が3点と、事例問題を沢山落とすと合格はなかなか厳しい試験です。

もちろん、根拠に基づいて正答を求めていく必要があります。しかしながら、実際私が現地で解いていた時は、根拠を明確に出せない問題も多くありました。そんな時に頼ったのが臨床家としての感覚です。

問題を根拠に基づいて解説するページは沢山ありますが、感覚を切り口に問題を見ていくサイトはあまりないように感じました。なので、事例をあくまでも岩国の感覚から切っていこうと思います。

ただ、個人の感覚はあまりあてにならないので、「いや、私それは違うと思う」「自分ならこうかな」というものがあれば是非お寄せください。

そのやり取りの末にお互いの感覚が磨かれることを願って、事例を見ていきたいと思います。

午前 問59

*赤色の選択肢が正答です。

3歳の男児。3日前に階段から落ち元気がないため診てほしいと母 親に連れられて来院した。担当医師の診察結果では、頭部に裂傷と血腫、 胸部に紫斑を認めた。胸部エックス線写真で肋骨に受傷時期の異なる複 数の骨折を認めた。公認心理師は担当医師から対応を相談された。ソーシャルワーカーからは、男児の家族はか月前にこの病院のある A 市 に転居して来たと伝えられた。診療録によると、最近1か月の間に、小児科で脱水、皮膚科で熱湯による熱傷、外科では外傷による爪剥離と転倒による肋骨骨折の治療歴がある。 このとき公認心理師が提案する対応として、最も適切なものをつ選 べ。

1、児童相談所へ通報する。
2、母親に夫との関係について聴く。
3、母親に子育て支援団体を紹介する。
4、 引き続き小児科外来での診療を勧める。
5、母親に今回と過去の受傷機転の詳細について問い質す。
引用:公認心理師試験 午前問題

考察

この問題を見たときに真っ先に思い出したのは、2018年3月に起こった、目黒女児虐待事件でした。この事件は、香川県善通寺市で子どもが一時保護された経験がある家庭が目黒区に引っ越してきました。その後、東京都の児童相談所も何度か訪問をしましたが、虐待の末子どもが死亡してしまった事件です。

この事件の報道を聞いたときに、本当に胸が苦しくなったのを今でも覚えています。と、同時にもし自分が児相のワーカーもしくは、心理士として働いていたらすぐ保護に踏み切れていたかという疑問も残ります。

思春期分野は特にですが、子ども本人が保護を望まないことがあります。

「児相に言ってみろ、ぶっ殺してやるからな」というセリフに似たようなことを言われたことは1度や2度ではありません。特に一度でも一時保護を経験している子は割と嫌がります。子どもだけではありません、親だって一時保護を望まないケースは多いでしょう。児童相談所はある意味権力機関ですので、本人の意思とは関係なく親子を引き離すことができます。緊急性のある場合は本人の意思とは違っても保護しなければならないことがあるということですね。

以上のような経験がある方は特に、「なるべく本人の意に沿った形で支援をしたい」という気持ちに覚えがあるのではないでしょうか。そういう気持ちがあるとどうしても、消極的な選択肢を選んだり、「保護」よりも「支援」を優先した選択肢を選びがちです。

私は「保護」の事例であると瞬間的にわかりましたので迷うことはありませんでしたが、「保護」なのか「支援」なのかを判断するうえで気を付けていることをいくつか述べておきたいと思います。

矛盾するようですが、「保護」なのか「支援」なのかを判断するのは児相以外の機関ではないということです。逆にいうならば「保護」か「支援」かの判断は児相にしかできないということになります。なので、基本的には「迷ったら通報」です。

事実、児相への通報基準も「虐待があったら通報」ではなく、「虐待が疑われる場合は通報」です。この問題は「保護」なのか「支援」なのか、あるいは「自分は迷っているのかどうか」という感覚を問う問題だったのかなと感じています。