第二回公認心理師試験が近づいてきたようです。去年と配点が同じならば、きっと事例問題は相当大きなウェイトを占めることになります。一方で、自分がかかわったことのない領域などだと、事例問題のポイントがつかめず苦労しますよね。

私の場合もそうだったので、試験を受けるみなさんの勉強手助けになるように主に教育領域から事例問題を作ってみることにしました。少しでもお役に立てれば幸いです。なるべくたくさん作りたいと考えています。また、「私もこんなの作ってみました!」というものがあれば問い合わせフォームから送っていただければ掲載させていただきます。

ただし、議論して作ったものではなく、実際のケースも出せないので私が空想を広げて作ったものにすぎません。間違っているところも誤っているところも沢山あると思います。そういうところは優しくご指摘いただき、議論を深めていきたいと思います。

事例

17歳の高校二年生、女性A。担任の教師からコンサルテーションの依頼があった。クラスの中で特定の友人Bといつも一緒にいる。BがAに内緒で他の友人と遊びに行ったことが、Aの耳に入りSNS上で強い誹謗中傷をした。これから生徒指導に入るが、生徒指導に入るにあたり意見を聞かせてほしいと言われた。母親から精神科クリニックの受診歴がある旨を担任は聞いているが、本人は学校側がそれを知っていることを知らない。担任にコンサルテーションを行うにあたって適切なものを選べ。

1、 主治の医師がいるので、公認心理師であるスクールカウンセラーから連絡をしてこれから行われる指導方針に関しての指示を仰ぐ

2、 主治の医師がいると合理的に推測されるので、公認心理師であるスクールカウンセラーから本人に対して主治医の確認を行った方が良いだろうと見解を出す

3、 指導に入る前にスクールカウンセラーが面談を行うことを提案する

4、 SNS上での誹謗中傷に関しては原則通りの生徒指導を行い、指導が終わった段階でスクールカウンセラーが面談を希望している旨を本人に伝えてもらう。

5、 背景に何らかの事情を抱えていることが予測されるので、指導に関しては中断してもらい、本人を取り巻く状況に関して情報を集めるよう提案する。

 

解答

正答は4を想定して作成しました。
文部科学省から出ている「公認心理師法第 42 条第2項に係る主治の医師の指示に関する運用基準について)の中では、指示を受けなくても良い場合として以下をあげています。

・ 心理に関する支援とは異なる相談、助言、指導その他の援助を行う場合
・ 心の健康についての一般的な知識の提供を行う場合
また、災害時等、直ちに主治の医師との連絡を行うことができない状況下においては、 必ずしも指示を受けることを優先する必要はない。ただし、指示を受けなかった場合は、 後日、主治の医師に支援行為の内容及び要支援者の状況について適切な情報共有等を行うことが望ましい。

引用:公認心理師法第 42 条第2項に係る主治の医師の指示に関する運用基準について

1は教員の行う指導に関しての指示を医師に仰ごうとしています。文科省の通知からも生徒指導に関する指示を受ける必要はないとされていますし、そもそも指導の方針をSCが出すというのもおかしな話です。以上から不適になります。

主治医の確認については同文書より

公認心理師は、把握された要支援者の状況から、要支援者に主治の医師があることが合 理的に推測される場合には、その有無を確認するものとする。
(中略)
また、主治の医師の有無の確認は、原則として要支援者本人に直接行うものとする。要 支援者本人に対する確認が難しい場合には、要支援者本人の状態や状況を踏まえ、その家 族等に主治の医師の有無を確認することも考えられる。いずれの場合においても、要支援 者の心情を踏まえた慎重な対応が必要である。
引用:公認心理師法第 42 条第2項に係る主治の医師の指示に関する運用基準について

以上のように記述されています。「クリニックに通っていることを学校が知っている」ということを本人が知らない状況で、その有無を裏付けるためだけに本人の面談を行うことは要支援者の心情を踏まえていると言えるでしょうか。本人からすれば、通院歴に関しては非常にデリケートな内容であることが予測されます。これから指導が始まるという混乱の時期に焦って行うべきではないでしょう。以上から2も不適となります。

スクールカウンセラーには外部性が期待されています。外部性とは、学校の教職員とは別の枠組みの人間として安心安全に相談できる枠組みです。例えば、相談したことが生徒指導の資料にされたり、教科指導の参考にされたりするようでは外部性が担保されているとは言えず安心して相談することができません。

3については、「これから指導が始まる」という段階で、教員が面談する前にスクールカウンセラーが面談をすることは外部性が守られているとは言えません。生徒にとっては「スクールカウンセラーが生徒指導の資料を集めた」と感じてもおかしくないでしょう。以上から不適になります。

4に関しては、特に問題がないかと考えます。「誹謗中傷」に関する生徒指導は教員の専門性において行ってもらい、すべてが終了した後でSCが面談を希望していることを伝えあとは本人に選択してもらうというのが最もスマートな動きだと考えます。ただ、つながっていた方が良いケースではあるので自主来談に任せるかどうかというのは悩みどころです。

5に関しては、生徒指導を中断するように要請するというのも、外部性が担保できないと考えられます。教育上の問題は教員の専門性と責任によって行われるものであり、こちらがそれに関して中断を要請するというのも変な話な気がします。

以上、議論の余地はかなりあると思います。Twitter(@iwakunily)でも、コメントでも構いませんので「これはおかしくない?」「これはそうだよね」というのがあれば是非お寄せください。