おそらく、心理職の方ならば一度は言われたことのある言葉ではないでしょうか。私も、「なんか考えていることがわかっちゃうんでしょーこわーい」という言葉かけを何度もされたことがあります。最初のころは「考えている事なんてわからないんだよ」と懇切丁寧に説明していましたが、最近は「わかるわかる」と適当に答えて「君は今カレーが食べたい!」などあてずっぽうに答えています。たまに「え、なんでわかったの?すごーい!」となるのが弱点です。

さて、冗談はさておき、こんなことを何度も聞かれるということは、どこかで一度ちゃんと説明しないといけないことなのかなとも感じていました。せっかく、ブログという媒体を手に入れたので、つらつらと書いてみたいと思います。あくまでも持論をぶちまけるだけなので、違う考えを持った心理士さんも沢山いると思うのであしからず。

人の心がわかるってなんだろう

実は、「人の心がわかる」ってずいぶんざっくりしたテーマですよ。それで一回、「人の心がわかるんでしょ」と言ってくる人に根掘り葉掘り聞いたことがあります。その人が言っていたのは「自分の好きな人や嫌いな人がわかったり、表面には出していないことを見抜かれたりすること」らしいです。

「岩国先輩のことが好き……だけど伝えることができない」

「あーまじ上司の岩国めっちゃムカつくけど、昇進に響くし付き合い良くしとこ」

こんな、心の動きがわかるということらしいです。

また、メンタリズム的なものを想像される方も多いようで、一度トランプカードを並べられてジョーカーの場所を当てるゲームをさせられたことがあります。当然全力で外しました。

メンタリズムとは別物

まずこれは言わせてください。

メンタリズムと心理学は別の学問です。数学と文化人類学くらいの違いがあります。

もちろん、DaiGoさん自身は心理学なども学ばれている方だと思います。しかし、メンタリズムはそこからDaiGoさんが一生懸命に研究して作られた別の体系の学問です。私もちょっと勉強したいくらいです。

なので、当然心理職である我々もメンタリズムはできません。がっかりされる方も多いかと思いますが、メンタリズムしたくて心理士になる方がいるとそれはそれで不幸だと思いますので……。

人の心も分からない

さて、もう一つの件です。

これは実は結構答えるのが難しいです。考えていることや秘めている想いはわかりません。ただ、その「わからない」ということは非常に重要視している職業であるとも思います。

もう少し突っ込んでいうならば、自分の心って自分自身も分からないと思うんですよね。例えば不登校の子に

「なんで学校に行かないんだ、思ってることがあるんだろ、ほら、言ってごらんなさい」といったところで出てこないですよ。非常に言葉の出てくるお子さんだったら、それっぽい理由を並べることはできると思いますが。もちろん、いじめなどの明確な理由があって本人がよく分かっていることもありますが、いけない理由はきっといじめだけの問題でもないと思います。

おそらく多くは黙ってしまうのではないでしょうか。体験していることや、心の動きがすべて言葉になる人はいませんから。あくまでも、言葉は体験や動きを近似しているにすぎません。心理療法を必要とする人は、「自分の心」という分からない世界にいて、迷いすぎて色々な困難を抱えていることが少なくありません。

心理職は、その迷っているクライエントさんを天上界から見下ろして「ちがうちがう、もっと右!」とか「そこで走っちゃいけないよ!」とか言う職業ではないのです。

もっというならば、「あなたが迷っているのはたいまつを持っていないからですよ」とか「どうしてそんなところへ行ったんですか、別のところに行きましょう」と指示する仕事でもありません。

現実的な臨床場面でいうならやりがちなのは「やはり、そんなにつらいなら転学した方がいいですね」とか「それは発達障害だから仕方ありません」とか断じてしまうことですね。さすがにもうやりませんが初学者の時はやったことがないわけでありません。

クライエントさんは、わからない世界の中で沢山の困難を抱えています。その分からない世界に飛び込もうとするのが心理職なのではないでしょうか。

だから、実はカウンセリングを始めた最初の期間はかなり苦しいです。無力感を感じることも少なくありません。その無力感や「どうしようもない感じ」が、クライエントさんの分からない世界に足を踏み入れはじめている状態なのかなと思っています。

「わからない」を分からせる職業ではなく、「わからない」を大切にする職業なのかなと個人的には感じています。